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これはTMFA主催のTMリーグに加盟している、架空の女子サッカークラブチーム「響野エンジェルス」のメンバーが書いたブログ……という設定のブログです。
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長いよ!
SS何話分もあるよ!

でも、ここまで妄想が広がっちゃって……

もうしばらくおつきあいお願いします。









響野エンジェルスのクラブハウスのロビーには一つのサッカーユニフォームが掲げられている。



背番号は「7」。その上には「HINOMOTO」という文字。

7番は響野エンジェルスの永久欠番だ。




光は入籍後、登録名を旧姓の「陽ノ下光」に戻している。
入籍前にわざわざ主人姓にしたのに、どうして?と聞かれたら。

「前は入籍してなかったから、登録名だけでも夫婦になりたかった。
 でもいまは本当に入籍しているからね。
 逆に夫婦関係がピッチに入ると変になるかも、って気持ちが強くて…
 だから、選手と監督の立場をはっきりしようって事で決めたの」

以後、彼女は引退まで登録名を旧姓で通した。
入籍後も高見姓のままだった高見詩織とは対照的である。



公二も引き続きクラブの監督として手腕をふるっていた。
優勝にはなかなか届かなかったが、選手を大事にする采配は、選手・クラブからの信頼も厚く、永久政権との声も高かった。

しかし、3年目終了後、突然辞任を発表する。
反対運動も起こったが、公二の意志は固かった。

「実際に永久契約を打診されました。
 本当にうれしいですが、それではいけないと思うんです。
 僕はもっとレベルアップしなければいけない。
 そのためには僕を厳しい環境に置き、鍛えなければいけないんです。
 しばらく欧州に行きます。
 そこで一から鍛え直します」

そういって、クラブから離れた。



妻2人を日本に置き、単身ヨーロッパに。
今は日本で有数のマネジメント会社のLCCとのつてで、あちこちの監督に教わったした。
たまに日本に帰ることもあったが、1年のほとんどをヨーロッパで過ごすことになる。

公二が教わったのはビッククラブの監督ではない、戦術にすぐれた名将でもない。
あくまで選手から、クラブから、そして地域から愛されている監督を選んで教わった。
選手への声のかけ方、精神ケア、試合での選手への鼓舞。
あくまで選手に最大限以上に力を発揮させるための手腕を学んだ。



一方、そのころ光は公二と離ればなれの生活ながらもクラブでのプレーを続けていた。

あれから、代表には何回も呼ばれた。
しかし、レギュラーになることはもうなかった。
経験豊富なバックアップとしての招集ばかりになっていた。

それでも試合に出るときは安定した力を発揮、
ベンチにいるときでも選手を励ますなど、チームを盛り上げいた。

その姿はかつて代表を率いていた名将アントニオ監督が惚れ込んでいたときと変わらない姿だった。



子供の事もあり、単身赴任の公二のところに行くことは一度もなかった。
寂しい夜は望と一緒にお互いを慰め合っていた。
そして携帯でのメールのやりとりは1日たりとも休んだことはなかった。



そして5年目。
2人目の妊娠と同時に現役引退。
このとき、本人には復帰の意志はまったくなかった。
このまま、専業主婦、それともクラブの事務として、それとも成長した娘と一緒に公二の元に移住する等考えていた。

しかし、出産後の復帰を希望するサポーターも多く、実際クラブも彼女の復帰に備えて、彼女が最初から背負っていた「7番」は誰もつけることはなかった。



そのころ公二は、ヨーロッパの監督に教わり成長を遂げていた。
いくつかのクラブでは実際にリーグ戦の指揮を任されたこともあり、安定した成績を収めている。
実際に正式にコーチへの就任を要請されたクラブも多数あった。
しかし、公二はそれをすべて断った。

「僕はいつかは日本に戻って、日本サッカーに恩返しがしたい。
 それに妻も待ってるしね」

笑いながら言う公二だが意志は固かった。




そんな公二と光の運命を変える事件が起こる。

リーグ創設7年目。
2部降格し、オーナーがかつてのチームメイトに変わった響野エンジェルスが低迷を続け、遂に3部に降格してしまったのだ。

この低迷期は光が引退した直後から始まっており、彼女の存在の大きさを物語っていた。


クラブ始まってから最大の危機にオーナーの伊集院レイは苦渋の決断を下す。
「本当に辛かった。自分たちの道を歩いている2人を呼び戻すのがいいことだったのか……こんな3部クラブに戻してよいのか……今でも思う時があります」
彼女は今でもこう語る。



彼女が下した決断。

欧州で名前を挙げ始めている主人公二の監督就任。
そして、引退している陽ノ下光の現役復帰。

公二はすぐのOKの返事をして日本に戻ってきた。

問題は光。
すでに引退してから2年。体は動かしているものの、またあのピッチで今まで通りに仕事ができるか不安だった。

それでもレイは説得した。
「お願いです……クラブを助けてください!」
ついには玄関に土下座をしてまでお願いをするレイ。

プライドも何もかも捨てたレイの姿に光は現役復帰を決意する。



そこからチームは生まれ変わった。
低迷の連続で負け犬根性が染みついてしまったチームを公二が見事に意識改革に成功した。
欧州で身につけたものがすぐに成果として現れた。
光は全盛期には及ばないものの、最後まで諦めない全力プレーでチームを引っ張った。
2年間のブランクも、クラブのインストラクターでもある望の協力もあり、またく感じさせることはなかった。


クラブを見放していたサポーターもリーグ創設時にクラブに貢献したあの夫婦が復帰して、クラブ復活に向けてがんばっていることを知り、再び応援を始めた。

勝つことの喜びを思い出した選手達、クラブ愛を取り戻したサポーター達、そして何より公二と光が自分たちの生き甲斐をそこに見つけた。


「3部リーグなのにスタジアムが満席なんですよ。
 僕も光もそれを見て決めましたね。
 一生このクラブと共に生きていこう、ってね」


そのときの様子を公二はこう語る。



公二と光が復帰して1年目で3部リーグを脱出。
以後、2部リーグの中上位をキープするまでにチーム力は回復した。

毎年1部リーグに何人も選手を引き抜かれてしまうが、それでもこの位置を保ち続けるのは公二の手腕に他ならない。
この時期、公二はクラブと永久契約を結んだと言われているが、本人やクラブはその件につれていっさい口にしていないため、真偽は未だに不明である。

公二は引き続けチームを指揮し、光もプレーを続けた。
しかし、次第に光もベンチを温めることも多くなり、コーチ役を任されることも多くなった。




そして、リーグ創設12年目。
公二と光の努力が遂に実る。

2部リーグながら、カップ戦の桜花杯を初制覇したのだ。

抽選での運の良さや、チームの好調さ、カップ戦特有の1部リーグの力の入れ具合の弱さ等いろいろラッキーな面は多かった。

しかし、SCM,FCH、WBL等、同じ伝統チームを撃破しての快進撃はまさに壮観だった。

優勝したときは公二と光は人目もはばからず号泣した。
記者会見でも泣き続け、あまりに泣いていたため、翌日に延期になったほどだ。




そしてその年、光は2度目の現役引退を発表する。

「もう私の選手としての使命は終わった」が理由。

現にこの年の光はリーグ戦での先発は0。
初制覇の桜花杯にいたっては1分もピッチに立っていなかった。

「これからはコーチとして、クラブそして公二を助けます」とコメント。

翌年からは、チームのテクニカルコーチとして公二と本当に二人三脚として活動することになった。




そしてこのとき光の背番号「7番」は永久欠番となった。




レイからの打診に光は最初は断った。
しかし、レイからの言葉により光はその栄誉を受けることを決める。

「この7番を讃えることはあなたを讃えるだけではないんです。
 これまでの12年間のすべてを讃えるんです。
 7番を振り返ることは、あなたの12年間を振り返ること。
 それはそれまでにクラブのためにがんばってきたみんなを振り返ることになるんです。

 その中で、12年間で一番クラブのためにがんばったのは光さん。あなただと思います。
 サポーターの誰もそれは異論は言わないと思います。

 私個人としても、受けてほしいんです。
 クラブを救ってくれたのはあなたです。

 12年間のクラブを代表して、そしてチームを救ってくれたお礼として
 受け取ってください」



この決定にはサポーターも大歓迎だった。
公二も「恥ずかしいけどな…」と言いながらもうれしそうだった。

光の引退記念パーティーには、初年度のチームメイトが全員駆けつけてくれた。
所在不明の紐緒、神条までが来たのだから、彼女の人柄がよくわかるだろう。


そして、公二と光はチームスタッフとして、クラブを支え続けた。





そして、それから3年後。
リーグ開設から15年後……

-つづく-
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