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これはTMFA主催のTMリーグに加盟している、架空の女子サッカークラブチーム「響野エンジェルス」のメンバーが書いたブログ……という設定のブログです。
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さて、最後です。

もう一言で終わり。ってところで、間違ってブラウザを消してしまった(泣

嫌になりそうですが、なんとかがんばります(苦笑









「いよいよだな……」
「そうだね……」


15年目のシーズン。
2部リーグの開幕戦を迎えようとしている。


「まさかこの日が来るなんてな……」
「そうだね、なんか夢のよう……」


開幕戦の相手はアウェーのSSS戦。
去年激闘の末2部陥落。
今年は圧倒的な力で1部に復帰することが至上命題。
期待も高いのかスタジアムは超満員。


「光、ここ2部だよな?マスコミ多くないか?」
「そうだよね。こんなに多いの久しぶり」


2部リーグだというのに、マスコミの数が異様に多い。
1部リーグでもこんなにいないのでは、と思うぐらいだ。


「やっぱり……か?」
「そうみたい……だね」


マスコミのお目当てはたった一人。
このピッチでデビューするかもしれない超大型新人だ。

ちなみにSSSが作ったチラシやパンフにも、
「今日、TMリーグの歴史が作られる!」等のコピーが踊っていた。

こういう話題を確実に商売につなげるSSSの商売手法は昔も今も変わっていない。


「もう15年たったんだよな」
「あっという間だったよね……」
「でも、楽しい15年だったよな」
「そうね。これからも楽しい人生にしましょうね、あなた」


15年で公二と光も変わった。

最初は幼かった顔つきの公二も今は立派な男性へと変わっている。
筋肉質ですらっとしたスタイルは変わりないが、それでも体力は落ちてきたと嘆いている。

光も可愛らしさでいっぱいだったのが、今は落ち着きのある女性へと変貌している。
お肌がすこし荒れたとかでいつも嘆いているが、すらりとしたプロポーションは20代前半から変わっていない。


「そういえば、望が来てるんだって?」
「うん、『心配で来ちゃった』だって」
「だったら、最初から来るって言えばいいのに」
「そうだよね。あははは……」


アツアツとかいう単語はもうこの2人には似合わない。
そばにいるのが自然な2人。
リーグ1のおしどり夫婦は並んでいるだけで絵になる。
カメラマンも2人の姿をしきりに撮っていた。


「なぁ、全員来てるんだって?」
「そうそう!みんな気になっちゃって来たみたい」
「まったく、同窓会ってわけじゃないのに……」
「でも、こういうときでないとあえないからね」


アウェーだけあって、応援団は少ない。
しかし、その中で元気な年増の女性集団。
15年前に戦友だった仲間達だ。


「なんか今日は特別な日になりそうだな」
「そうだね。みんなにとって特別な日だよね……ところで使うの?」
「わからん……戦況によるけど、やっぱり開幕戦の雰囲気を味合わせたいな」
「あぁ~、ひいきするんだぁ~」
「こら!」


そうしているうちに、ウォーミングアップの時間が終わり、選手達が戻ってくる。
公二と光もロッカールームに戻っていく。




そして試合が始まる。

前半はホームのSSSの攻勢。
毎度の事ながらSSSのFW陣はゴールへの執着心がすごい。
やはり清水代歩を生んだチームだけあるのかもしれない。

その猛攻をアウェーの響野が耐え抜き、前半は0-0で折り返す。

いつものことだが、この2チームとの試合は接戦が多い、だから余計にスタジアムが盛り上がる。



そして、後半。
公二はどんな状況にも対応できるようにサブの全員にアップを命ずる。
ベンチの動きにスタジアムが徐々にざわめき出す。

そして試合が遂に動く。
SSSのエースFWがボレーシュートを決めて先制したのだ。
ホームのサポーターの歓声がどっと沸き上がる。



しかし公二はそれでは動じない。
一つ一つのプレーに神経質になっていた若き日の姿はそこにはない。
たくさんの経験を積み、動じない精神力をすでに身につけている。

光もスタジアムの歓声に動じず、サブのアップ状況を真剣に確認している。
技術がなく脚だけと言われていた光も今ではテクニカルコーチとして選手からの信頼を集めている。
精神的に弱いと言われていた姿もそこにはない。



そして公二は光のほうを振り向き、口を動かし、指示をだす。
光もそれに頷き、一人の選手をつれて戻ってくる。

その選手は羽織っていたガウンを脱ぎ、ユニフォーム姿になる。

そのとたん、スタジアムから大歓声がわき上がった。
ホームアウェー関係ない大歓声。
それは一人の少女の登場を歓迎する声であった。



母親譲りの赤毛のショートカット

すらりとのびた自慢の脚。

彼女の背番号はクラブの永久欠番「7」

そしてその上に書かれているのは「HINOMOTO」

そう、公二と光の愛娘だ。



一流選手に囲まれ、サッカーボールをおもちゃに育った2人の愛の結晶は、自然にサッカーに興味を持つようになる。

公二と光の才能を十二分に引き継いだ彼女はめきめきと成長していく。

そして、17歳になった今年、両親が率いるこのクラブに入団したのだ。



彼女のポジションは左サイドハーフ。
しかし、これも一悶着あったのだ。
娘は母親と同じ左サイドバックがやりたいと主張したのだ。
公二が何度も娘と話し合ってようやく娘は納得した。
ちなみに登録名を母親の旧姓にしたいと言いだしたのもこの娘だ。

「まったく、光に似て頑固なんだよ。
 光もそうだったな。
 光が生きるのはサイドハーフだって言ったのに、
 結局最後まで左サイドバックにこだわってたんだよな」

公二はそういって笑っていた。



入団の際、光は迷わず自分の7番を娘に与えた。

実は永久欠番を受ける時に一つだけ条件を付けていた。
「もし娘が入ったら、7番を継いで欲しい」
オーナーの伊集院レイはそれを快諾した。

「私の想いが詰まった7番を娘に継いで欲しかった。
 親馬鹿かもしれないけど、この子は私の想いを継いでくれると思う。
 この7番を大きくしてると思う。いや、この子ならできる」



彼女の入団は今年のTMリーグの話題を独占した。

名監督と名選手の娘というサラブレッド。

小さい時からTMリーグの話題の中心にいた、生まれながらのサッカープレーヤー。

15年前に世間を騒がせたあの子供がこんなに成長していた。



彼女の登場はTMリーグのこれまでの15年間を振り返る契機となっていた。
TMリーグを振り返る本や特集番組がいくつも組まれ、それまでの選手達の再評価へとつながっていく。
そして、TMリーグの殿堂を作ろうという運動も起こっている。



そんな話題の少女は、ベンチで両親に挟まれ、話を聞いている。


「いいか、緊張することはないぞ。練習と同じだかな」
「うん」
「スタジアムなんて絵だと思えばいいのよ。ボールに集中集中!」
「うん」
「声を出せばなんとかなる。大丈夫だからな!」
「うん」
「普段どおりにやれば大丈夫だからね!」
「あの……お父さん?お母さん?」


娘の最後の一言に監督とコーチは少し怒った顔をする。


「こら、グラウンドでは『監督』と『コーチ』だろ!」
「そうだよ!家とここでは区別しなくちゃ!」


しかし、それを聞いた娘が今度は怒りだす。


「なによ!区別してないのはお父さんとお母さんでしょ!」
「「えっ?」」
「さっきから『大丈夫、大丈夫』って、まだ具体的な指示をなにももらってないよ!」
「「あっ……」」
「まったく……お父さんもお母さんも心配性なんだから……はぁ」


ため息をつく娘に両親は恥ずかしそうな顔をする。


「あのな……サイドでできるだけボールキープして、クロスをあげるんだ」
「あと、ディフェンダーが少し疲れているから、時々前線に飛び込むんだよ」
「そうそう。そういう指示が欲しかったのに……まったく」
「ごめんごめん」
「まっ、がんばってくるから!」
「そんなに調子に乗ると怪我するよ!」
「大丈夫!それより今晩はお祝いだからね!お父さん!お母さん!」


娘は母親譲りの太陽のような笑顔を見せ、サイドラインへと走っていく。


その背中を公二と光は万感の思いで見つめる。
娘の背中に、15年前の自分たち、15年間の自分たちが見えたのかもしれない。

2人とも頬に涙が伝っていた。





遂に背番号7がサイドラインに立つ。

ちょうどボールが反対サイドを割る。

係員が電光掲示板をあげる。

主審の笛が鳴る。

交代で戻ってくる選手に声をかけると、全速力でピッチに飛び込んでいく。

その瞬間、スタジアムから割れんばかりの歓声。

ホームアウェー関係ない歓声。

それは一人の少女のデビューを歓迎する歓声であった。




こうして新しい時代が始まった。

技術もフィジカルもない、でもサッカーへの情熱だけは世界中のどこにも負けていなかった女性達。
その遺伝子を受け継いだ子供達がグラウンドに立つ時代がやってきたのだ。

想いは受け継がれていく。

そしてその想いは大きく成長していく。




背番号「7」はこれからの未来を象徴するかのように、太陽に照らされキラキラと輝いていた。



-とりあえずおわり-
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