2006/06/10 (Sat) 【清川】 何も言えない……

「悔しい！」

清川です。

今日の試合……負けました。
この前の対戦のときと同じような展開。
こちらが攻めているのだけど、向こうが１点を決めてしまう。
しかも途中交代で入った選手がすぐに決めてしまう。

こちらの攻守とも悪くなかっただけに嫌な負け方でした。

そしてロッカールームに響いた冒頭の叫び声。
みんな驚きました。

誰だと思う？



レイさんなんだよ。









レイさんは大財閥のお嬢様ということもあり、
常に冷静なプレーをしていて頼りになる人だ。

そんなレイさんがロッカールームで大荒れ。

ベンチは蹴り散らす、ペットボトルは投げ散らす、ロッカーはガンガン叩く。
みんな事態を把握できずに呆然としていたが、
しばらくしてからキャプテンとサブがレイさんを抑えた。

レイさんはベンチでに腰掛けた。

「なんでみんな負けて平気なの？
　私はとても悔しい。

　あれだけシュートを打って、あれだけ枠内にとらえて、
　あれだけボールを支配して、あれだけ相手の攻撃の芽をつんで。

　なのに何で勝てないの？
　私はこのチームが弱いなんて思ったことは一度もない！
　相手も強いとは思ったこともない！
　でもなんで？
　あれだけの猛練習の成果がなんで結果につながらないの？

　悔しいと思わないの？
　負けて悔しいと思わないの？
　勝ちたいと思わないの？
　
　みんなどうなのよ！」

レイさんは顔を両手で覆って泣いてしまった。
レイさん、相当悔しかったんだろう。

しかし、レイさんの言葉に何も言えなかった。



そこに赤井がやってきた。

「ここにいる奴らで悔しいと思わない奴なんていねぇよ」

レイの前に立ち、両手を腰に当てた格好で言った。
レイは顔を上げ、赤井を見つめていた。

「……だがな。
　負けた奴には何も言う資格がないんだよ。

　色々言えるのは勝った奴だけ。
　
　負けた奴は何も言わずに結果をそのまま受け入れる。
　それしか許されない世界なんだよ。

　あたしだって言いたいことはたくさんあるよ。
　でも、それを言うためには試合に勝つしかないんだよ。
　そうだろ？」

レイは顔を縦に何度も振った。
赤井の言葉に納得しているようだ。

「……次勝つぞ……」

赤井はそう言うと、自分のロッカーに戻って着替え始めた。

それを合図にみんな黙々と着替え始めた。



みんな同じ気持ちなんだろうな。
すごく悔しいと思うんだ。
その悔しさをかみ殺してるんだ。

あたしだってそう。
次は絶対に勝ちたい！
今日はその気持ちを再確認するいいきっかけになりました。
次の試合はなんとしてでも……言うのはそれからです。
【清川　望】